ホテル・ファンタンゴ(15)

それよりも、今まで何度も女の子を見ていたのに唯の1度も後姿を見なかった事の方が驚きだ。今更ヤバイ子を連れてきてしまったと後悔しても遅いような気がする。世の中はなるようにしかならないのだ。「背中に描かれているものについて質問はないけど、君の住んでいる家と君については幾つか質問がしたいな」「何?」「どうして君はいつも下着でいたんだい?それから、土だ。どうして家に土を敷き詰めているのか教えてくれないかな」「下着でいたのは、服がなかったから。土を敷き詰めているのは、人間らしい生活をしなさいと言われたからよ」尤もな回答だ、と納得できる訳がない。「どうして服を持っていないの?」「あの家に置いて行かれた時に、ブラジャーとパンツ姿だったからよ」「誰に?」「お父さん」「お父さんは、その、君と同じような絵が背中に入っている人なのかい?」「背中の絵の事は訊かないって言ったクセに」「あ、そうだったね」「もし、そうだとしたら怖い?」「そりゃあ、まあね。背中に絵が描かれている人の娘さんを覗き見していたとなると、ちょっとは怖くもなるさ」「あはは、それはそうね。たぶんお父さんに言ったら、沈められちゃうわ、あなた」やっぱりそういう人だったか。「ドコに?」「そんなコトしらないけど、誰にも見付からないところ?」「君は、お父さんに何か言うのかな?つまり、その、僕に覗かれていたコトとかのコトだけどさ」「言わないわよ」「どうして?」「言ったら沈められちゃうからに決まっているじゃない、それに言う必要もないわ。それと、お風呂にも入れて貰ったし、つまり、あなたがいい人だからかな?」「いい人?」「うん、いい人よ、とっても。」「そうかな?」「そうよ」僕の予想は当たっていたようだが幸運にも沈められる事はなさそうだ。「人間らしい生活をしなさいって言われてさあ、どうしてそれが土を敷き詰める事に繋がるわけ?」「土の上で暮らすって、何となく人間らしい気がしない?」なんとなくだが解る気がする。

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